W社さま
高級金襴製造販売卸/京都市

「海外販路開拓」と言われても、何をすれば良いのかわからなかった。
そんな悩みを抱えていたW社さまは、神社仏閣向けの伝統的な西陣織金襴を製造・販売する創業100年を超える老舗企業。
限られた予算の中、試行錯誤しながら自社の魅力と可能性を見つめ直し、フィンランドでの市場調査を通じて海外デザイナーからの初受注へとつなげました。
準備の大切さ、社内の意識改革、そして実際の訪問から得た学びとは――。
W社さまの会社概要と事業内容
【業種】 西陣織製造販売卸
【資本金】 1000万円
【売上】 8000万円
【従業員数】 8人
【創業設立】 創業1909年 設立1986年
海外展開を始める際の課題
- 高級布地の需要減少と価格の高さが新規販路の壁に
- 社内に英語対応人材が不在で、海外販路開拓に不安
- 宣伝費も限られ、自社だけでの戦略構築が困難
- 社内では販路開拓に対して否定的な声もあり意識統一が課題
支援で実現した実務的ステップ
- 自社と市場環境の分析、社内の方向性共有
- F/S調査先をフランスからフィンランドへ戦略的に変更
- 西陣織の価値や用途を明確にしたプレゼン設計
- 大手テキスタイルメーカー、業界団体へのヒアリングとインタビュー支援
- 6泊7日で13社を訪問し、現地ニーズの探索と商談実施
支援後に見えてきた成果
- フィンランドの有名デザイナーから初受注を獲得
- ゴールデングローブ賞出席の女優がW社製ドレスを着用
- 海外向けブランドの方向性と必要な社内体制が明確化
- 海外ターゲット、海外市場でニーズのある用途の明確化
- 海外企業との商談対応力・プレゼン設計・実施に関する実践的なスキルの習得
- 自社の見直しと海外市場への準備の重要性を社内全体で共有
専務さまのコメント
フィンランドでのF/S調査を経て、自社の布地が新たな形で評価される経験をされたW社さま。
以下では、専務さまご自身の言葉で、その過程の葛藤や気づき、今後に向けた思いを語っていただきました。
西陣織の可能性を信じ、未知の国で得た新たな視点
弊社の製品は、「西陣織金襴」という神社仏閣を荘厳するための絹織物です。
手機・力織機を含め、本金・本プラチナの糸を使い、引箔で織る技術を有した世界でも珍しい絹地を織ることが出来ます。
分業制の西陣の中でも最終工程の「織元」として、金襴地の総合プロデュースをし、「緯錦の金襴地」に関しては、最高の布地を織る事が出来ると自負しています。
数々の賞(内閣府・経済産業省などから)を受賞し、内閣府・外務省・大手ブランドへも納品しています。
高級布地の需要の減少を見越し、神社仏閣以外へも販路開拓を始めましたが、既存の販路以外ではその価格の高さが問題となり、宣伝費を割けない弊社は何をしたら良いのかもわからなくなっている状況でした。
販路開拓に関する予算も0。
予算はこつこつと小物などを販売して作る事にし、ウェブサイトはワードプレスで自力で製作を進めていました。
そんな中、色々な方に「外国にもっていかないと」とアドバイスを受けましたが、海外販路開拓と言っても、弊社には英語を話せる社員はおらず、海外へ販売したことがあると言っても向こうから飛び込んできた話を聞き、そのまま布地を送っただけで、自分で開拓した経験は無かったのです。
それどころか、国内の販路開拓すらも思うように進んでいない状況でした。
セミナーや各種相談窓口へも通っていた時に小川先生に出会いました。
弊社は祖父の代からの得意先も多く、取引先がほぼ固定されている状況で、販路開拓を意識したことがない会社でした。
販路開拓と言う言葉に対しても否定的な意見が多い状況でした。
小川先生からアドバイスを頂き、会社の現況と取り巻く環境、西陣織の魅力や弊社の強みを再確認するとともに、社内ミーティングも複数回行い、全員で今後の会社の方向性を共有することに努めました。
数々の打ち合わせの中で印象的だったのは、小川先生がおっしゃった
「西陣織のサンプルをただ海外に持っていって披露するだけでは『Oh, beautiful!』で終わってしまいますよ。
御社が海外のお客様に本当に提供したいものは何ですか?自社の製品にどんな価値があって、誰に喜びや幸せをもたらし、いかにその国の生活になくてはならないものにできるのかを、訪問先で明快にアピールできるようにしてください。
つまり、ビジネスにつなげる話をしなければ、現地調査に行く意味がないんです」
という言葉。
その言葉を聞いて、海外進出に対する自身の理解不足に気づかされました。
宿題の量は果てしなく、絶望を感じることも度々でしたが、打てば響くように、小川先生が的確な返信をしてくださり、大変励みになりました。
ターゲット国もどこにするのかすら決まっていない状況で、「高級絹地と言えばフランスかしら?」と思っていた所、小川先生の「フランスにはもう西陣織は上陸しています。上陸していないところへ行きましょう」という言葉から、西陣織がまだ入っていなくて、かつデザイン先進国であるフィンランドへ市場調査に行くことに決まりました。
西陣織、とりわけ金襴にラグジュアリーを見出してくださった企業やクリエイターに生地を提供し、今までにない新しいものを生み出していくことをビジネスとしてのゴールと位置付けました。
フィンランドでは、フィンランドの主なテキスタイルブランドへ訪問できることになり、6泊7日で13企業を訪問しました。
弊社社長と専務の二人で赴きましたが、二人とも慣れない訪問&プレゼンで右も左もわからず、折角のフィンランドのホテルのサウナも入ることが出来ないくらい疲労困憊しましたが、他社の海外訪問の話を聞くと、私たちの訪問はヘルシンキの中で完結したので、だいぶと楽な旅だったようです。
現地の有名デザイナー、テーム・ムーリマキさんへ弊社の金襴地を納品する運びとなり、その布地で仕立てたドレスを着てフィンランドの女優さんがゴールデングローブ賞の授賞式へ出席してくださったりと一定の成果が出ました。
帰国後はHPの改良・社内体制の見直しと克服としなければいけないことが明確になり当社の見直し点を浮き彫りにできた事も成果の一つです。
面談において小川先生が「準備がすべてです」と仰っていた事が良く分かりました。
今現在、海外取引がビジネスになっているかと言うと、そんな事はありませんが、あの時の経験は確実に弊社の物となっています。
あのフィンランドへ行くまでの工程が無ければ今の弊社は存在していないと思います。
小川先生の指導はなかり厳しかったのですが、弊社とは馬が合ったようで、とても為になりました。
辛い時に慰めではなく、本当に必要なことを伝えてくださる人は少ないですが、弊社はフィンランド以降も折々にご指導を頂いています。
あまりにもひよこだったため、小川先生には苦労をおかけしました。
感謝しております。
今も、再度小川先生と海外販路を目指したいとチャンスを探しています。